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1. はじめに
会社員で給与所得のみの人はほとんどの場合、年末調整で所得税の納税が完結しますが、それ以外の所得がある人などは基本的に確定申告を行う必要が出てきます。例えば会社員で副業を始められた人や、育休中に副業を始められた人、本格的に事業を始められた人などは確定申告をしなければいけないケースがあります。
どういった人が確定申告の必要あり、どういったことをしなければいけないのか見ていきます。
2. 確定申告の概要
2-1. 確定申告が必要な人とは
2-1-1. 給与所得者の場合
① その年中の給与の収入金額が2,000万円を超える人
② 給与所得及び退職所得以外の所得の金額(源泉分離課税は除く)の合計額が20万円を超える人
③ 2か所以上から給与を受けている人で、従たる給与の支払者から支払いを受ける給与の収入金額と給与所得及び退職所得以外の所得金額(上記②に同じ)との合計額が20万円を超える人
2-1-2. 給与所得者以外の場合(個人事業主、不動産賃貸収入のある人など)
給与所得以外の所得(源泉分離課税は除く)のある人で所得控除の合計額を超える場合において、課税総所得金額等に対する税額が配当控除額を超える人です(つまり所得税の納税が発生する人です)。
2-2. 主な所得
所得の種類は10種類あり、一般的な所得(給与所得以外)の具体例は以下になります。
・事業所得
・不動産所得
・配当所得:未上場企業からの配当は申告する必要があります。
上場企業の配当も申告すると有利なこともあります。
・譲渡所得:土地・建物や事業用資産の譲渡などがあります。
また生活用動産(家具、衣服、電化製品、時価30万円以下の貴金属、書画・骨とう等)の譲渡は申告の必要がありません。
・一時所得:生命保険金等の満期・解約返戻金などで利益が50万円を超える場合は申告が必要です。
・雑所得:年金、先物取引、為替取引、仮想通貨取引などが該当します。
2-3. 損益通算
損益通算とは、各種所得金額の計算上生じた損失のうち一定のもの(不動産所得、事業所得、譲渡所得)についてのみ、一定の順序にしたがって、総所得金額、退職所得金額等を計算する際に他の各種所得の金額から控除することができます。
2-4. 確定申告の年間スケジュール
① 1月1日~3月15日:前年白色申告の方で、当年青色申告を希望する場合の届出提出期限です。
(*)当年1月16日以後、新たに事業を開始した場合には、その事業開始等の日から2月以内が提出期限になります。
② 2月16日~3月15日:確定申告(所得税)提出・納付期限になります。
3. 確定申告における事業所得について
3-1. 青色申告、白色申告とは
青色申告で申告できる人は、期限までに税務署に届出を提出し、基本的には複式簿記での記帳をしている方です。複式簿記での記帳には会計ソフトを利用するのが一般的です。白色申告は、青色申告以外の人が簡易簿記での記帳により申告することです。
3-2. 青色申告をするためには
青色申告書による申告をしようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後、新たに事業を開始した場合には、その事業開始等の日から2月以内。)に「所得税の青色申告承認申請書」を提出した人が青色申告できます。
3-3. 青色申告の特典
① 青色申告特別控除が適用できます。
② 親族への給料を経費にできます(青色事業専従者給与)。
③ 30万円未満の資産を一括費用計上できます(減価償却の特例)。
④ 赤字を3年間繰り越すことができます(純損失の繰越しと繰戻し)。
3-4. 青色特別控除額の違い
3-5. 複式簿記とは
以下の帳簿を作成する必要があり、作成にあたっては会計ソフトを利用するのが便利です。
● 仕訳帳
全ての取引の勘定科目を決めるとともに、借方及び貸方に仕訳するための帳簿であり、取引の発生順に取引年月日、内容、勘定科目及び金額を記載します。
● 総勘定元帳
全ての取引を勘定科目の種類別に分類して整理及び計算する帳簿であり、勘定科目ごとに取引年月日、相手方の勘定科目及び金額を記載します。(・固定資産台帳)
3-6. 青色事業専従者とは
3-6-1. 適用要件
「青色事業専従者給与に関する届出書」を納税地の所轄税務署に提出していることが要件です(提出期限:青色事業専従者給与を必要経費に算入しようとする年の3月15日まで)。
3-6-2. 青色事業専従者になれる人とは
・青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族
・その年の12月31日現在で年齢が15歳以上
・その年を通じて6カ月を超える期間、その青色申告者の営む事業に専ら従事していること
3-6-3. 青色事業専従者給与額
・届出書に記載された方法により支払われ、かつ、その記載されている金額の範囲内で支払われたものであること
・労務の対価として相当であると認められる金額であること
3-7. 白色事業専従者とは
3-7-1. 白色事業専従者控除の要件
・白色申告者の営む事業に事業専従者がいること
・確定申告書にこの控除を受ける旨やその金額など必要な事項を記載すること
3-7-2. 事業専従者とは
・白色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること
・その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること
・その年を通じて6か月を超える期間、その白色申告者の営む事業に専ら従事していること
3-7-3. 事業専従者控除額
次のⅠまたはⅡの金額のいずれか低い金額
Ⅰ、事業専従者が事業主の配偶者であれば86万円、配偶者でなければ専従者一人につき50万円
Ⅱ、この控除をする前の事業所得等の金額を専従者の数に1を足した数で割った金額
3-8. 減価償却資産の特例
3-8-1. 10万円以上30万円未満の減価償却資産
原則:通常の減価償却(10万円以上20万円未満のものは3年の均等償却も可)になります。
特例:青色申告者は一括費用計上可能になります。
3-8-2. 30万円以上の減価償却資産
通常の減価償却になります。
*金額の判定にあたっては、個人事業者の経理方式(税込経理なら税込で判定、税抜経理なら税抜で判定)によります。また免税事業者は必ず税込経理になります。
3-9. 確定申告における経費のポイント
● 租税公課
【経費になるもの】
事業税、消費税(申告納税を行う消費税)、自動車税、印紙代など
【経費にならないもの】
所得税、住民税、罰金、延滞金など
● 消耗品費・・・10万円未満の備品など
● 地代家賃
【経費にならないもの】
生計を一にする配偶者その他の親族に支払う地代家賃
● 家事関連費
個人が生活するために支出する費用と業務上の必要経費とが混在している費用のことです。例えば、店舗兼住宅の水道光熱費、支払家賃などがこれにあたります。
原則として家事関連費は事業所得の金額の計算において必要経費として控除することできません。ただし家事関連費のうち、①その経費が業務の遂行上必要でかつ、②その必要である部分とそうでない部分とに明らかに区分できる場合のその必要相当の金額(合理的な金額)については必要経費に算入することができます。
4. 確定申告における所得控除について
4-1. 主な所得控除一覧
・医療費控除(基本的に医療費を10万円以上支払っている場合)
・社会保険料控除(健康保険等、年金等、雇用保険等)
・小規模企業共済等掛金控除
・生命保険料控除
・地震保険料控除
・寄付金控除(ふるさと納税等)
・扶養控除
・配偶者控除
・基礎控除
4-2. 小規模企業共済
国の機関である中小機構が運営する小規模企業共済制度は、小規模企業の経営者や役員・個人事業主などのための、積み立てによる退職金制度です。掛金は全額所得控除できます。
【特徴】
・月々の掛金は1,000円~70,000円で設定でき、年間最大84万円まで掛けられます。
・掛金全額をその年の所得控除ができ、所得税・住民税の節税になります。
・共済金を受取の際、退職所得又は雑所得(公的年金等)扱いとなり、税制上優遇されています。
4-3. 個人型確定拠出年金
個人型確定拠出年金( iDeCo)は、自分が拠出した掛金を、自分で運用し、資産を形成する年金制度です。掛金は65歳になるまで拠出可能であり、60歳以降に老齢給付金を受け取ることができます。
4-3-1. メリット
① 掛金(最低でも月々5,000円から、1,000円単位で区分により上限あり)で全額所得控除されます。
② 確定拠出年金制度内での運用益が非課税で再投資されます。
③ 受給時に所得控除を受けられます。
4-3-2. デメリット
① 原則60歳まで引出しができません。
② 運用する商品によっては元本割れするリスクがあります。
4-4. ふるさと納税
ふるさと納税は自己負担額2,000円を除いた全額が控除の対象になります。つまり2,000円の自己負担で返礼品がもらえる仕組みです。
しかしふるさと納税ができる金額には一定の上限があります。その上限は収入や家族構成等の様々な要因のもとに計算されます。そのためふるさと納税を扱っている運営サイトにおいて、どのくらいふるさと納税ができるのかシュミレーションできます。
4-5. 扶養控除
扶養控除の対象となる人については以下の要件に該当する必要があります。
① 配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族をいいます。)であること
② 納税者と生計を一にしていること
③ 年間の合計所得金額が48万円以下であること(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
④ 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと
4-6. 配偶者控除
納税者に所得税法上の控除対象配偶者がいる場合には、一定の金額の所得控除が受けられます。
控除受ける納税者本人の合計所得金額が以下の場合ごとに控除額が異なります。
・納税者本人が900万円以下⇒控除額38万円
・納税者本人が900万円超950万円以下⇒控除額26万円
・納税者本人が950万円超1,000万円以下⇒控除額13万円
【控除対象配偶者の要件】
① 民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません。)。
② 納税者と生計を一にしていること。
③ 年間の合計所得金額が48万円以下(令和元年分以前は38万円以下)であること(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)。
④ 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと。
【配偶者特別控除】
配偶者控除の適用がない人で、納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下であり、かつ、配偶者の合計所得金額が48万円超133万円以下である方については、配偶者特別控除の適用を受けることができます。
※出産育児一時金、出産手当金、育児休業給付金はいずれも所得には含まれません。
4-7. 社会保険料控除
本人又は生計を一にする配偶者やその他の親族の負担すべき社会保険料の支払いが対象となり、その年に支払った金額または給与から控除される金額が控除できます。
また自営業やフリーランスの人が加入する国民年金・国民健康保険に関して、出産前後の4ヶ月分の保険料免除の制度があります(出産する女性本人の場合)。
5. 執筆者情報
<執筆者情報>
税理士法人西方会計 福岡事務所長 西方亮祐
大学卒業後、大手損害保険会社へ入社し、リテール営業に5年間従事。その後、税理士試験に合格し、大手税理士法人に入社。相続・事業承継対策や、中小・中堅企業から上場企業まで幅広く顧問・申告業務に従事。出向期間に携わった案件で社長賞を受賞。
出向期間満了した1年半後に出向先に転職し、2年間相続・事業承継コンサル業務に従事し、2022年1月より西方会計へ入社。
現在は、顧問業務を中心に事業を行っているが、企業のライフサイクルやニーズに応じ、税務会計支援・経理業務効率支援、相続・事業承継対策など幅広いニーズに対応している。
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